誤送金の4630万円に税金はかかる?

【なぜこんなミスを・・】

阿武町の4630万円の誤送金が世間を賑わせています。この件については色々思うことがあります。
一番疑問に思うのは、なぜ役場がこんな大それたミスを犯してしまったのだろうという点です。
通常、阿武町のような小さな町で一人の町民にこれほどの大金を振り込むケースは無いと思います。
上長が事前に振込データのチェックをすればすぐに異常に気付くと思いますが、チェックを全くしていなかったということなのでしょうか。
町のデタラメな事務によって、一人の若者が日本一有名な犯罪者となり、彼の人生は台無しになってしまいました。
なぜこんなミスが起きてしまったのか、今後詳細を明らかにして欲しいと思います。

さて、表題の件です。

ネットの掲示板を見ていると、T 容疑者が受け取ったお金について、高い税金が課されてしまうのではないかという書き込みがちらほら。
少し気になったので調べてみることにしました。

【所得税基本通達】

所得税基本通達36-1では次のように言っています。

36-1
法第36条第1項に規定する「収入金額とすべき金額」又は「総収入金額に算入すべき金額」は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない。

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/01.htm

「違法であるかどうかは問わない」ということは、言い換えれば、犯罪行為によって得た所得であっても、その所得に対して所得税が課せられるということです。

しかし、これはわざわざ言うまでもなく、当たり前のことだと思います。
犯罪だろうがなんだろうが金を儲けたのであれば、その儲けに対する税金を払わなければいけません。
もし、犯罪で得た金に税金が課されないなんてことになったら、犯罪者を優遇することになってしまいます。

【帰ってきた金】

じゃあ、容疑者は4630万円に対する税金を払わなければいけないんだと思う方が多いと思いますが、話はそう単純ではありません。

容疑者が税金を払わなければいけないのかどうかは、彼が誤送金のお金をカジノに使ったかどうかによるのではないかと思います。

町は誤送金した4630万円のうち4300万円程を決済代行業者から回収したと言う報道がありました。
容疑者が4630万円を全額カジノに使ったという話がウソなのかどうか現時点では不明です。

もし容疑者が4630万円をカジノに使ったのがウソである場合、容疑者は、町から預かった4300万円を使わずにそのまま町に返したわけですから、その返したお金に税金が課せられることは無いと思います。
お金の貸し借りに所得税が課されることはありません。

一方、容疑者が4630万円の全額をカジノに使ったということであれば、代金決済業者が4300万円を肩代わりしてくれたということになります。
容疑者は4300万円を儲けたことになります。
容疑者には、その儲けに対する税金を支払う義務が発生するかもしれません。

【参考文献】

犯罪行為によって得たお金に税金がかかるという件について、上記の所得税基本通達以外には根拠となる規定はありませんでした。
ただ、国税庁のホームページに次の参考となる文献が掲載されていました。


税法上の所得概念の解釈について

この文献では、不法行為によって得た所得に所得税が課せられるのかどうかという話を通じて、所得とは何ぞやという点について論じています。
非常に学術的で難しい論文ではありますが、一通り目を通してみました。

この論文の32ページに次の記載があります。

税法は経済的利得に対する利得者の利得としての認識と、その利得に対する支配享受があるときには、かりにその利得につき法的権限はなくとも、その者の所得を構成すると解し

https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/07/57/ronsou.pdf

「利得に対する支配享受」があったかどうかという点が今回の誤送金に対する課税の論点になると思います。
容疑者は4630万円を全額カジノに使ったということであれば、その全額を支配享受したということになります。
代金決済業者が肩代わりしたとしても、その支配享受した事実は消えません。
一方、4300万円をカジノに使わず返したということであれば、そのお金を管理支配する時期はあったが、そのお金を使って楽しむという利益享受はなかったと判断できます。

上述の通り、容疑者が全額をカジノに使い、その代金の大半は代金決済業者が肩代わりしたということであれば、4630万円について所得税が課される可能性があります。
ただ、実際問題、容疑者にその大金に係る税金を納めるだけの財力は無いと思います。
理論上の話を長々と述べてきましたが、税金を払うことができないことが明らかな人に対して、杓子定規に税務署が税金を払えと言うのかどうかは甚だ疑問です。

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