消費税軽減税率ゼロで飲食店が潰れる?

税制改正

【玉木氏の言い分は極論?】

参院選を前に各政党が消費税減税の政策を打ち出しています。
立憲民主党や維新の会は軽減税率をゼロにする案を掲げていますが、国民民主党等はこれに反対しています。
国民民主党の玉木氏は、軽減税率をゼロにすると「飲食店にとって大打撃になる」と言っていますが、それは本当なのでしょうか?

結論を先に言うと、必ずしもそんなことはありません。
全ての飲食店が軽減税率ゼロによりダメージを受けるわけではありません。

その理由を以下述べたいと思います。

【飲食店に大打撃ってどういうこと?】

玉木氏等、軽減税率ゼロによる飲食店へのダメージを語っている人達の理屈はこうです。

  1. 飲食店の仕入価格が据え置きになる可能性がある。(食材仕入税込108円→食材仕入税抜108円)
  2. 食料品の購入は消費税ゼロになるが、外食は10%となり、自炊と外食の差が大きくなりすぎる。
  3. 納税額が増える。

まず、1.についてですが、確かに一部でその現象が発生する可能性はあります。ですが、それを言い始めたら消費税を下げる意味なんて無くなります。
玉木氏の言う5%への減税だって同じじゃないですか。
消費税を下げても商品の値段が下がらないとしたら、飲食店云々は関係なしに、消費税を下げるメリットなんて無くなってしまいます。
1.の理屈を語る人が、消費税減税を訴えることには違和感を覚えます。

2.については、確かにその通りですが、その傾向はすでにもう何年も前から強くなっています。
外食の値段は上がりました。
シンプルなラーメンが一杯1,000円の時代です。
それでも人気の飲食店には行列ができます。
外食が高いのは、みんなもうわかりきっています。
安さを求める客はある程度淘汰されたと思います。
自炊が今より安くなったとて、外食を選ぶ人は選ぶ。そのように思います。

3.は紛れもない事実です。
ただし、現状の税法では、消費税の原則課税を適用している飲食店のみがこれに該当します。
簡易課税の適用を受けている飲食店や免税の飲食店は、納税額が増えるわけではありません。
原則課税の適用を受けている飲食店は、消費税の仕入税額控除が大幅に減少することになりますから消費税の納税額が増加します。
ただし、仕入価格自体が消費税の減税分だけ減少するわけですから、その分をきっちりプールしておけば納税の心配は無いはずです。
1年単位で見ればキャッシュフローに変化はありません。
大手の飲食店は、この辺りの資金管理はキッチリ行っているでしょうから、心配無いはずです。

【小規模飲食店はむしろ救われる】

上述の通り、小規模な飲食店は、「簡易課税」という消費税の計算方法を適用しているケースが非常に多いです。
町中華、ラーメン屋、蕎麦屋、居酒屋、喫茶店等、多くの個人経営の飲食店が簡易課税の適用を受けています。
飲食店の場合、原則課税より簡易課税の方が有利な納税額になるケースが多いですから。

簡易課税というのは、基準期間(2年前)の売上が5,000万円以下の事業者に適用される消費税の計算方法です。
簡易課税の場合、売上に一定の率を乗じて消費税の額を算出しますから、軽減税率ゼロにより食材の消費税がゼロになっても、消費税の納税額に変化はありません。
簡易課税の適用を受けている飲食店は、単純に軽減税率ゼロになれば仕入価格の減少により、利益が改善されることになります。

飲食店も我々一般消費者と同様、食材費の高騰により苦しんでいます。
簡易課税の適用を受けている飲食店は、軽減税率ゼロによって、ダメージを受けるどころかむしろ救われることになるわけです。

玉木氏等が言う軽減税率ゼロが飲食店に及ぼすダメージの話は、原則課税の飲食店限定の話です。
簡易課税の飲食店には関係ありません。

また、売上1,000万円以下の消費税免税の飲食店も少なくありません。
インボイスが導入された今も免税の飲食店は多く存在します。
免税の飲食店も簡易課税の飲食店と同様に軽減税率ゼロによるダメージは当然ありません。

【救済措置が必要】

小規模な飲食店であっても、原則課税を適用しているケースは存在します。
原価率が高い店は、原則課税を適用した方が有利な場合もありますから。
そういった飲食店は、もし軽減税率ゼロになった場合、早急に簡易課税に切り替える必要が生じます。
簡易課税に切り替えないと納税額で損をすることになります。
簡易課税を適用する場合、「消費税簡易課税制度選択届出書」を「適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで」に税務署に提出しなければいけません。
インボイス登録事業者と同様に、この期限を課税期間の前日ではなくて、期中でも良いことにするなどの救済措置が必要だと思います。

また、今まで述べたのは、飲食店の簡易課税の業種区分が第4種のまま変わらないということが大前提です。
例えば飲食店が、第4種から第5種になってしまうと、簡易課税の適用を受けている飲食店も納税額が大幅に増えてしまいます。
もしそのような改正があれば、小規模な飲食店もダメージを受けてしまいます。
国には、業種区分の変更を行わないことを強く求めたいと思います。

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