単一税率で事務負担が軽減?

消費税

【国民民主党の訴え】

参院選を前に各政党が消費税減税の政策を打ち出す中、国民民主党は消費税の税率を単一税率の5%にすることを訴えています。
消費税の軽減税率は「事業者の事務負担が膨大」であり、単一税率にすることによってこの事務負担が軽減される。
そのようなことを単一税率にすることのメリットの1つとして掲げています。
国民民主党は、立憲民主党が打ち出している軽減税率ゼロという政策に強く反発しています。


税に携わる人間として、この訴えには若干の違和感を覚えます。
以下、その理由を説明したいと思います。

【軽減税率の事務負担】

現状、消費税の税率は10%と軽減税率の8%が混在しています。
税率が複数存在することの事務負担というのは確かに存在します。
食料品や新聞については8%、それ以外の取引については10%で処理をしないといけません。
事務負担は、具体的には販売管理システムの運用や会計システムを利用した経理処理などで発生しています。
我々、会計に携わる人間は、経理処理において、原則的には仕訳ごとにその取引が8%なのか10%なのか判断をしなければなりません。

【軽減税率は慣れた】

軽減税率には一定の事務処理の手間が存在します。
しかし、軽減税率が導入されたのは令和元年です。
もう導入されて7年近くが経過しました。
軽減税率の事務処理は当たり前のものとして身に付いています。
今となっては軽減税率が面倒くさいと思うことはほぼ無くなりました。

もし、国民民主党の単一税率5%が導入されたらかえって面倒になると考えています。
5%が導入されたとて、ある日を境に8%10%は無し!全部5%!となるわけではありません。
消費税の税率は原則的に契約時点の税率が適用されます。
今も実務ではリース契約等で旧8%の税率が登場します。
同じ8%でも旧8%と軽減8%は違います。
我々は日常的に、10%、旧8%、軽減8%、非課税、不課税を分けて経理処理を行っています。

単一税率の5%に統一されたとしても、しばらくは、10%、旧8%、軽減8%、新税率5%を分けて処理する手間が発生することになるんです。

【軽減税率0がいい】

仮に消費税の税率が、永久に5%になるのであれば、最初は面倒でも数年後には処理が楽になると考えることもできます。
しかし、国民民主党は永久に5%にするとは言っていません。
一定の条件をクリアした時には、10%に戻すと言っているのです。
新たな税率5%を登場させて、また無くすというのはとても面倒だと感じてしまいます。

軽減税率8%を0にするのは、事務処理的に楽だと思います。
上述の通り、軽減税率の処理は導入から何年も経ち、定着しています。
経理処理的には、おそらく今まで軽減8%で処理していたものを不課税への処理に変更するだけの話でしょう。
販売管理システム等の改変も軽減税率=8%と定義しているものを0に変えるだけであれば大した手間ではないと思います。


単一税率導入により、事務負担が軽減されるという話を鵜呑みにしてはいけないと思います。

【余談】
消費税を廃止にすれば、事務処理的には一番楽です。ただ、消費税の計算を飯の種にしている身としては、消費税を廃止されたら困るというのが正直な感想です。

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