食料品の消費税ゼロでスーパーは本当に巨額還付を受けるのか

SNS上の誇張表現

食料品の消費税がゼロになると、
「スーパーは巨額の消費税還付を受けて、ぼろ儲けする」
といった情報をSNS上で見かけることがあります。

この話を見て、私は少し違和感を覚えました。

たしかに、食料品の消費税がゼロになれば、還付となるスーパーは増えるでしょう。
しかし、「巨額の還付金」「ぼろ儲け」という表現は、かなり誇張されているように思います。

そもそも消費税とは、預かった税金と支払った税金の差額を精算する仕組みです。
還付とは、これまで支払っていた消費税が戻ってくるだけであり、
それ自体が利益を生むものではありません。

誤解を招く情報に注意

食料品の消費税がゼロになると、
食料品の売上にかかる消費税は確かにゼロになります。

しかし同時に、食料品の仕入にかかる消費税もゼロになります。
この点を誤解している方が多いように感じます。

なお、運賃、パッケージ代、水道光熱費、店舗家賃などについては、
引き続き消費税10%が課税されるため、
これらにかかる消費税については仕入税額控除の対象となります。

また、スーパーが販売しているのは、
軽減税率8%の食料品だけではありません。

日用品や酒類は軽減税率の対象外であり、
これらの売上には引き続き消費税10%が課税されます。
そのため、これらに対応する消費税については納税が必要です。

SNS上の誤情報の多くは、この

  • 「食料品の仕入にかかる消費税も同時にゼロになる」
  • 「10%課税の売上が残る」

という点を考慮していないように思われます。

シミュレーション

一般的なスーパーの指標をもとに、
1店舗で運営する中小スーパーを想定してシミュレーションを行いました。

【現状】食品8% / 日用品・酒10% の場合 (単位:千円)

区分項目税込金額税抜金額消費税額売上比率一般的な指標
売上 食料品 (8%)772,500715,27857,22275.0%70〜85%
日用品・酒 (10%)257,500234,09123,40925.0%15〜30%
売上計1,030,000949,36980,631100%100%
売上原価食料品(8%)△567,863△525,800△42,06355.1%55〜60%
日用品・酒(10%)△189,287△172,079△17,20818.4%10〜15%
原価計△757,150△697,879△59,27173.5%72〜75%
売上総利益(粗利)272,850251,49021,36026.5%25〜28%
販管費 10%対象経費△113,300△103,000△10,30011.0%11〜13%
人件費 他(対象外)△144,200△144,200014.0%13〜15%
販管費計△257,500△247,200△10,30025.0%24〜27%
営業利益15,3504,290(※1) 11,0601.5%1〜3%

(※1) 消費税納税額: 預かった税 80,631 - 支払った税 69,571(仕入59,271+経費10,300)= 11,060千円の納税

【シミュレーション】食料品 0% の場合 (単位:千円)

区分項目税込金額税抜金額消費税額売上比率一般的な指標
売上 食料品 (0%)715,278715,278075.3%70〜85%
日用品・酒 (10%)257,500234,09123,40924.7%15〜30%
売上計972,778949,36923,409100%100%
売上原価食料品(0%)△525,800△525,800054.0%55〜60%
日用品・酒(10%)△189,287△172,079△17,20819.5%10〜15%
原価計△715,087△697,879△17,20873.5%72〜75%
売上総利益(粗利)257,691251,4906,20126.5%25〜28%
販管費 10%対象経費△113,300△103,000△10,30011.6%11〜13%
人件費 他(対象外)△144,200△144,200014.8%13〜15%
販管費計△257,500△247,200△10,30026.5%24〜27%
営業利益1914,290(※2) △4,0990.0%1〜3%

(※2) 消費税還付額: 預かった税 23,409 - 支払った税 27,508(仕入17,208+経費10,300)= 4,099千円の還付

まとめ

上記のシミュレーションでは、
食料品の消費税をゼロとした場合、たしかに消費税は還付となりました。

しかし、その還付額は
売上10億円規模のスーパーで約400万円程度にすぎません。

これを「巨額の還付金」と言えるでしょうか。

還付されるのはあくまで経費などで払いすぎた分だけであり、売上の税金が丸ごと戻ってくるわけではありません。

仮にイオンのような巨大スーパーであっても、
消費税の還付額が数千億円規模になることは現実的ではありません。
このシミュレーションを、仮に売上10兆円規模に当てはめたとしても、還付額は約400億円程度にとどまります。
なお、イオンのような巨大スーパーでは、消費税10%の売上が占める割合が相対的に高いため、そもそも消費税が還付ではなく、納税となる可能性も十分に考えられます。

SNS上で見かける
「イオンが数千億円の消費税還付を受ける」といった情報は、
事実関係を大きく誤解させるものだと考えます。

繰り返しになりますが、還付金とは、あくまで「先に多めに支払った経費等にかかる消費税」が精算されるだけの仕組みです。
「巨額の還付金」「ぼろ儲け」という説は、こうした消費税の仕組みや、「仕入にかかる消費税も同時にゼロになる」、「10%課税の売上が残る」といった点を踏まえておらず、適切とは言えないと考えます。