現状の新聞の消費税
食料品の消費税を1%とすることが閣議決定され、今後、その具体的な内容について国会で議論が進められることになります。
そんな中、私が特に気になっているのが、宅配新聞の消費税がどうなるのかという点です。
(私は勤務時代に新聞販売店との関与が多く、現在も新聞販売店の関与先があります。)
現状、食料品に加えて、週2回以上発行される宅配新聞は、消費税の軽減税率8%の対象となっています。
これが食料品と同様に1%になるのか、8%のまま据え置かれるのか、それとも10%になるのか。
宅配新聞の消費税率がどうなるのか。これは新聞販売店の経営だけでなく、経理処理にも大きな影響を与えることになります。
経理処理への影響
食料品の消費税が1%になると、新聞の消費税率がどうなろうと、新聞販売店の経理処理への影響は避けられません。
というのも、新聞販売店では、拡材(読者に配る販促品)や物品販売などで食料品を扱っている販売店も多く、日々の取引において、1%、8%、10%、非課税の取引が混在することになるからです。
特にやっかいなのが、本社請求書の処理です。
新聞販売店では、本社から毎月届く分厚い請求書の項目を、税率別・科目別に集計して仕訳しています。
ここに新たに1%が加わるとなると、かなり面倒な作業になります。
しかも、1%の取引についても、相手がインボイス登録事業者なのか、免税事業者等なのかによって、仕入税額控除の取り扱いが変わってきます。
例えば、Excelで本社請求書の項目を入力し、シートごとに税率を分けているケースでは、
- 1%
- 1%(免)
- 8%
- 8%(免)
- 10%
- 10%(免)
- 非課税・不課税
と、7つのシートが必要になることになります。
しかも、新聞販売店の多くは複数の新聞を扱っています。
朝日、毎日、日経など新聞社ごとに分かれ、さらに支店が複数ある販売店であれば、新聞社別・支店別に処理する必要があります。
一体、シートがいくつ必要になるのでしょうか。
新聞販売店に関与する会計事務所にとっては、かなり頭の痛い問題になります。
経営への影響
1%の場合
可能性は低いかもしれませんが、新聞の消費税率が食料品と同様に1%になる場合、これは新聞販売店にとって喜ばしいことです。
新聞業界は率直に言って、斜陽産業です。
現在、経営が苦しく、日々の資金繰りに苦労している販売店も少なくありません。
消費税が1%になれば、読者にとっては実質的な値下げになりますから、読者減少の勢いを弱める効果が期待できます。
また、消費税の納税額も大きく減少することになります。
消費税は年1回、2回、4回といった形で納税している販売店が多いですが、その納税額は決して小さくありません。納税資金の確保に苦労している販売店も少なくありません。
新聞の消費税率が1%になれば、本社からの新聞仕入は10%、新聞収入は1%となるため、消費税の納税額は大きく減少することになります。
(折込収入等が10%の課税売上として残るため、丸々還付という形にはなりません。)
経理面でも、これまで8%だった新聞の税率が食料品と同じ1%になるのであれば、税率区分が増えるという意味ではなく、現在の8%と置き換わる形になるため、多少は処理が楽です。
8%の場合
新聞の消費税率が8%のまま維持される場合、経営への影響は特にありません。
ただし、上述したとおり、経理処理への影響は大きくなります。
食料品について新たに1%の税率区分が加わるため、本社請求書などの経理処理が複雑になります。
10%の場合
新聞の消費税率が10%になるとすると、これは新聞販売店にとって極めて大きなダメージとなります。
消費税が10%になるということは、読者にとっては実質的な値上げです。
新聞の読者離れがさらに加速する可能性があります。
そして、最も深刻なのが消費税の納税負担です。
新聞の売上にかかる消費税率が10%になれば、現在よりも納税額が増えます。
現状でも納税資金の確保に苦労している販売店がある中で、さらに納税額が増えるとなれば、経営が厳しい販売店にとっては決定的なダメージになりかねません。
経理面でも、8%の場合と同様に、食料品の1%が加わることで処理が複雑になります。
本社への影響
では、宅配新聞の税率が変わると、新聞本社にはどのような影響があるのでしょうか。
実は、新聞本社は直ちに大きな影響を受けるわけではありません。
というのも、新聞本社が販売店に販売する新聞は、現状でも軽減税率8%ではなく、10%の消費税が課されているからです。
(ご存知無い方が多いと思います。)
そのため、宅配新聞の税率が1%、8%、10%のいずれになったとしても、新聞本社から販売店への新聞の卸売りにかかる消費税率は変わりません。
読者の増減による影響も、直ちに新聞本社に及ぶわけではありません。
新聞本社は販売店に対して、実配数に関わらず一定数の新聞を供給しているという、いわゆる「押し紙」の問題があります。
そのため、販売店の実配数が減少したとしても、新聞本社が販売店に卸す新聞の部数が直ちに減少するわけではありません。
(もちろん、長い目で見れば、販売店の廃業・統廃合などによって、新聞本社も影響を受けることになるでしょう。)
まとめ
2年間限定の食料品の消費税1%への引き下げについて、私は反対の立場です。
2年間限定で、しかも1%という中途半端な税率にすることで、税率引き下げ時にも事務処理が増え、2年後には再び税率変更に伴う事務負担が発生します。
こうした事務負担は決して小さなものではありません。
2年間限定であれば、減税ではなく給付にした方が事業者にとっても事務負担が少なく、分かりやすいのではないでしょうか。
さて、制度の大枠が決まった以上、色々と言っても仕方ありません。
これから具体的な制度設計や取り扱いが決まっていくことになりますが、私としては、新聞については食料品と同様に1%に引き下げられることを期待しています。
もし10%になったら、販売店へのダメージはかなり大きなものになるでしょう。
今後の動向をしっかりと見ていきたいと思います。



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