はじめに
個人事業主や同族会社の役員が、自宅の一部を事務所として使っているケースはよくあります。
自宅の一部を事務所として使い、その使用割合に応じて減価償却費、光熱費、固定資産税、住宅ローンの利息などを必要経費に計上する。
会社であれば、役員個人と会社の間で賃貸借契約を結び、会社から家賃を支払うという方法もあります。
実際に自宅の一部を事務所として使っているのであれば、これらは一定の範囲で経費にできます。
個人事業主の場合は、事業所得の経費。同族会社の役員がその会社から事務所家賃を受け取る場合は、不動産所得の経費となります。
ただ、ここで注意したいのが、その自宅について住宅ローンを組んでいて、個人で住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用を受けている場合です。
事業用として使っている割合によっては、住宅ローン控除の対象額が制限されたり、適用そのものが受けられなくなったりすることがあるからです。
今回は、自宅兼事務所における「必要経費」と「住宅ローン控除」の関係について解説します。
住宅ローン控除の要件
自宅の一部を事業用に使っている場合、その使用割合によって住宅ローン控除への影響が変わってきます。
事業用割合が50%超
自宅の50%超を事業用に使っている場合、住宅ローン控除は受けられません。住宅ローン控除の対象となる家屋は、居住の用に供する部分が二分の一以上あることが前提とされているためです。
(租税特別措置法施行令第26条第1項)
では、例えば自宅全体を100%事業用として、減価償却費や光熱費、固定資産税、住宅ローンの利息をすべて事業所得の必要経費に計上していたらどうなるでしょうか。
事業用割合と住宅ローン控除の適用割合は基本的に整合していなければなりません。「100%事業用」として経費を計上しておきながら、「住宅ローン控除は100%受けたい」というのは筋が通りません。
経費または住宅ローン控除のどちらかを税務署から否認されるリスクが極めて高いと言えます。
自宅兼事務所の必要経費を計上する際は、住宅ローン控除への影響まで見越して判断する必要があります。
事業用割合が10%超~50%以下
この場合は、事業用部分を除いた居住用部分について住宅ローン控除を受けることになります。たとえば事業用割合が20%であれば、居住用部分80%に対応する分が住宅ローン控除の対象です。
(租税特別措置法関係通達41-27)
必要経費についても、実際の使用状況に応じて按分し、事業用部分だけを計上します。事業用部分は経費に、居住用部分は住宅ローン控除にと使用割合ごとに分けて考える必要があるということです。
事業用割合がおおむね10%以下
事業用として使っている部分がおおむね10%以下であれば、家屋全体を居住用として扱うことができます。
この場合、事業用部分があることを理由に住宅ローン控除の額が減らされることはありません。
(租税特別措置法関係通達41-29)
ただし、必要経費については、実際の事業用部分に対応する金額をきちんと計算する必要があります。
たとえば自宅の一室を仕事場にしているなら、その部屋の床面積などを基準に事業用割合を出し、減価償却費、固定資産税、光熱費、住宅ローンの利息などをその割合で必要経費に算入します。
経費の按分の考え方
自宅兼事務所でよくあるのは、「自宅の一部屋を事務所として使っている」というケースです。部屋全体ではなく、部屋の一角に机とパソコンを置いて仕事をしているだけ、ということもあるでしょう。
こうした場合は、床面積などを基準に、実際の使用状況に応じて事業用割合を計算することになります。
ここで押さえておきたいのは、住宅ローン控除が「税額控除」だという点です。
住宅ローン控除は算出された所得税額から直接差し引かれるため、税額への影響が大きくなりがちです。
住宅ローン控除を受けている場合、「経費はできるだけ多く計上すればいい」と単純に考えるのではなく、住宅ローン控除への影響も含めて全体で判断することが大切です。
特に、事業用割合がおおむね10%以下に収まっていれば、住宅ローン控除は家屋全体を居住用として扱ってもらえます。
自宅兼事務所の経費を計算する際は、事業用割合が10%以下に収まるかどうかが大きなポイントになります。
まとめ
自宅兼事務所の必要経費を計上している場合、住宅ローン控除との関係には注意が必要です。
住宅ローン控除を受けているのに、自宅に係る経費を高い事業用割合で計上していると、控除額に影響が出ます。
一方で、事業用割合が10%以下であれば、住宅ローン控除は家屋全体を居住用として扱うことができます。
自宅兼事務所の場合は、
- どの部分を事業用として使っているか
- どの経費をどの割合で必要経費にするか
- 住宅ローン控除にどう影響するか
をあわせて検討することが重要です。



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