宗教法人への課税強化案
食料品に対する消費税減税の財源として、「宗教法人への課税強化」が案として浮上しているようです。
私はこれまでお寺の税務に関わってきた経験がありますが、実務的な観点から、宗教法人の安易な課税強化には反対の立場をとっています。
全国にある多くの小規模寺院において、これ以上の負担増は財務を悪化させ、ひいては歴史的な文化財の維持管理を困難にする恐れがあるからです。
それは、日本が大切にしてきた文化の衰退に直結しかねません。
お寺にも法人税はかかる
「お寺は法人税が全くかからない」と誤解されがちですが、決してそんなことはありません。
宗教法人が得る収入であっても、法律で定められた「収益事業(34業種)」に該当するものには、一般企業と同様に法人税が課せられます。
実務上、お寺でよく対象となるのは「不動産貸付業」や「駐車場業」です。
※物品販売やペット供養も税務調査で指摘されやすい収益事業です。
「不動産貸付」が非課税になる条件
多くのお寺は境内地以外にも土地を所有しており、その地代収入をお寺の維持費(修繕費など)に充てています。
檀家離れが進み、お布施だけでは運営できない寺院にとって、これは生命線です。
なお、この土地貸付には一定の課税ルールがあります。
次の条件をすべて満たす場合に限り、例外的に非課税(収益事業に該当しない)とされます。
- 地代の額:年間の地代が、その土地の固定資産税・都市計画税の合計額の3倍以下であること。
- 用途:貸し付けている土地の上に立つ建物の床面積の2分の1以上が居住用であること。
- 面積:貸し付けている土地の面積が、その建物の床面積の10倍以下であること。
逆に、これらの条件を満たさない土地貸付は収益事業となり、法人税を課されることになります。
実務においては、この判定を一つひとつの契約ごとに行う必要があり、非常に手間のかかる作業です。
この緻密な計算を経て収益事業分を算定し、適正に申告を行っているのがお寺の実態です。
まとめ
お寺は決して「無税の聖域」ではありません。
収益事業には法人税が課されますし、住職の給与からは源泉所得税も引かれます。
また、境内地以外の土地には固定資産税もかかっています。
「お寺は無税で優遇されている」というイメージが先行していますが、まずは現状の制度と、お寺が地域文化を支えている実態を正しく認識することが大切ではないでしょうか。

