相続税・贈与税の一体化の問題点

【いつ改正?】

数年前から政府の税制調査会において「相続税・贈与税の一体化」の議論が行われています。
令和3年においてその改正が入るのではないかと噂されていましたが、結局その改正は見送られました。
やはり、コロナ禍で困っている人が多い中で納税者の負担増になる改正はしづらいというのが改正が見送られた理由だと思います。
ただ、令和3年度税制改正大綱の18ページに 相続税・贈与税の一体化について 「本格的な検討を進める」 との記載があります。
コロナの状況次第では、今後その改正が行われる可能性があるということです。

【1税法2税目】

相続税と贈与税は両方とも相続税法という1つの税法の中で定められている税金です。
贈与税は相続税を補完するために存在するものです。
もし贈与税がなかったら、生前に子や孫に財産を移転することによって相続税を免れることが簡単にできてしまいます。
贈与税は、生前の贈与に高い税金を課すことによって、相続税を補う役割を果たしています。
相続税と贈与税は密接な関係にある税金です。
生前贈与加算や相続時精算課税などすでに一体化している部分もあります。
政府が議論している改正の内容はどういう内容なのでしょうか。

一体化の強化】

相続税・贈与税の一体化についてはたびたび雑誌などで取り上げられているようです。
それらを抜粋したネットの記事を見ると、現状の生前3年間の生前贈与加算が5年〜15年に延長されるのが改正の内容になるのではないかという予想が語られています。

単なる生前贈与加算の期間の延長であれば、その改正は相続税・贈与税の一体化というより、一体化の強化と言った方が正確ではないかと思います。生前贈与加算はすでに存在するわけですから。

なお、現状の生前贈与加算は、相続等により財産を取得した人は、その相続開始前3年以内に被相続人から贈与により取得した財産の価額を相続財産の価額に加算しなければいけないという内容のものです。

参考 国税庁HP

歴年贈与】

相続税の心配をされている方の多くが、相続税対策として贈与税の非課税枠を利用して子や孫に財産の移転を行っています。
歴年贈与であれば年間110万円まで贈与税は課税されませんので、その金額の範囲内で長期に渡って財産の移転を行っているケースが多いと思います。
場合によっては、贈与の証拠を残すため、あえて110万円を超える金額で贈与を行って申告している方も多くいらっしゃると思います。

生前贈与加算の期間が延長されてしまうと、これらの相続税対策が使いづらくなってしまいます。
例えば期間が10年に延長されれば、亡くなる10年前までの贈与財産が生前贈与加算の適用を受け、相続財産に加算されてしまうことになります。
相続税を意識し始めるのは仕事をリタイヤした後の70歳位の方が多いと思います。
その年代から80歳代までの歴年贈与の節税が封じ込まれてしまうということは、すなわち暦年贈与の相続税対策はもう使えないものになってしまうということです。

問題点】

仮に10年前まで生前贈与加算の期間が伸びると、ある問題が発生することを懸念しています。
申告をサポートする税理士の立場としては10年前まで遡って預金通帳の記録を調べなければいけないわけです。
ですが、10年前の通帳を保管している方はどれだけいるでしょうか。
銀行に依頼して取引記録を発行してもらうにしても、10年前まで遡ったら手数料がとんでもない金額になるケースもあると思います。
納税者が「10年前に生前贈与など無い。取引記録は必要ない。」と言い張ればそれを受け入れてしまうケースが生じてしまうかもしれません。
生前贈与を事前に把握して正しい申告を行うのが税理士としての務めです。
ですが、生前贈与の期間が長くなれば長くなるほど、その部分を正確に把握することについての不安が生じてしまいます。

また、納税資金の面においても不安があります。
仮に10年前まで遡るとして、それほど昔に贈与してもらった金を残している人がどれだけいるでしょうか?
生前贈与加算をすることによって相続税が発生するが、その納税資金が無いという人が数多く発生してしまうと思います。

課税側には、上記の問題点があることを十分理解をした上で改正について慎重に検討してもらいたいところです。

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