ホリエモンの「消費税を着服してた」に違和感

【これまで消費税を「着服」してたくせに?】

ホリエモンがインボイスの反対運動をしている方に対し、「これまで消費税を着服してたくせによー言うわ。ちゃんと払えや」と発言したことが話題になっています。

ヤフーの記事

この発言を見て、私を大きな違和感を覚えました。
「着服」というのは犯罪的な悪質な行為です。

しかし、消費税の免税事業者が消費税を納めなくて良いというのは、法律で認められていることです。
決して法律に反する行為ではありません。

国税庁 No.6501 納税義務の免除

ただ、中には消費税の免税点制度について納得がいかない方もいらっしゃると思います。
ホリエモンの発言に対し反論をしつつ、納得がいかない方へ納得していただくよう説明をしたいと思います。

【免税点制度は他の税金にもある】

元々なぜ消費税に免税点制度が設けられたのか。
国税庁のサイトに参考となる論文が掲載されています。

国税庁 消費税の事業者免税点制度の在り方についての一考察

この論文の中で、消費税の免税点制度が設けられた理由は
「小規模な事業者の事務負担や税務執行コストへの配慮」
と記載されています。

消費税が免税になるのは、原則として基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者です。
売上1,000万円というのは規模としてかなり小さいです。
サラリーマンの年収で考えると1,000万円は大きいですが、事業を行っている方には様々な経費がかかります。
例えば、小売業であれば粗利はせいぜい30%程度でしょうから、売上から原価を差し引いたら、300万円程の粗利しかありません。そこから様々な経費を差し引いたら残りはほとんどありません。

そのような小規模な事業者から広く税金を集めようとしても大した税収にはならないはずです。
インボイス制度はとても面倒な制度です。これを運営するためには多額の「税務執行コスト」が発生するはずです。
インボイス制度を導入することによって増える税収と発生する税務執行コストの差額はいかほどなのでしょうか?

消費税だけではなく、所得税、住民税、固定資産税、相続税その他のほとんどの税金において、低額の納税を免除する制度が存在します。

徴収側が低額の納税を免除する理由の一つは「税務執行コスト」の無駄を排除するためです。
要は、少ない税金を徴収するために頑張っても割に合わないから低額の納税をオマケしてくれているのです。

ホリエモンは所得税、住民税、相続税の基礎控除、固定資産税の免税点の恩恵を受けている方達についても、「彼らは払うべき税金を払っていないから税金を着服している。」と言うのでしょうか?

【消費税は預り金ではない】

ホリエモンが「着服」という表現を使用する背景には、事業者にとっての消費税は「消費者からの預り金である」という考えがあると思います。
この件については、過去に「消費税は預り金ではない」ということを示す判例があります。(1990年3月26日 東京地裁判決)
政府も国会答弁でそのことを認めています。
また、上記の論文にも次のような記載があります。

消費者が免税事業者からの請求に応じて支払った「消費税相当額」とされる金額は、納税義務を免除される以上、単に請求書や領収書のペーパー上で算出された数値に過ぎず、転嫁すべき消費税相当額の実態を表しているものではない。すなわち、当該金額は、法的な観点からは、消費者からの「預かり金」というような性格を有しているものではなく、その実質は、単なる商品・役務の対価の一部であるというべきである。

https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/88/01/index.htm

要は、免税事業者が受け取った消費税相当額とされる金額は単なる商品・役務の対価の一部であるということです。
決して預かり金ではないということです。

消費税が免税であるにも関わらず、税抜き価格で表記して販売するケースがあるとすれば、それはあまりよろしくないとは思います。
それは改善されるべきですが、そういうケースが存在するから全ての免税事業者は悪であるとするのはとても乱暴な意見だと思います。

【最後に】

インボイス制度はまもなく始まろうとしています。
今さら反対してもあまり意味がないかもしれません。
ただ、ホリエモンのように免税事業者を悪者にしようとする輩を見ると黙っていられなくなります。
インボイス制度が始まっても全ての免税事業者が納税義務者になるわけではありません。
今後もインボイス登録をせずに、免税事業者であり続ける方は多く存在します。
そのような方達を悪者に仕立て上げるような行為は許されることではありません。
ホリエモンのような乱暴な意見を鵜呑みにしてはいけないということを強く訴えたいと思います。

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