生前贈与加算が適用されないケース②

【はじめに

相続税の生前贈与加算が適用されないケースは大きく分けると次の2つに分類されます。

  • ケース1 受贈者が相続等により財産を取得してないケース
  • ケース2 贈与税の非課税財産に該当するケース

前回はケース1について説明しました。今回はケース2について説明したいと思います。

死亡前3年以内の贈与財産の価額を相続財産に加算するのが生前贈与加算です。
しかしながら、死亡前3年以内の贈与財産であっても相続財産に加算されないものが存在します。
それが次に説明する租税特別措置法上の贈与税の非課税財産と相続税法上の贈与税の非課税財産です。

【 租税特別措置法上の非課税財産

国税庁のサイトに上記ケース2についての記載があります。
以下、引用です。

2 加算しない贈与財産の範囲
(1) 贈与税の配偶者控除の特例を受けている又は受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額

(2) 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額

(3) 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
 (上記の金額のうち、贈与者死亡時の管理残額については、相続等により取得したものとみなして、相続税の課税価格に加算される場合があります。)

(4) 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額
 (上記の金額のうち、贈与者死亡時の管理残額については、相続等により取得したものとみなして、相続税の課税価格に加算される場合があります。)

No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm

贈与について特別な非課税枠を設けている制度を利用した場合、その非課税の適用を受けた財産については相続財産に加算しないという話です。
一つ一つの制度に関する細かい説明は割愛します。

これらの非課税財産は租税特別措置法という法律で定められている制度に係るものです。
これらの制度はそれぞれ次のように呼ばれています。

(1)贈与税の配偶者控除(いわゆるおしどり贈与)
(2)住宅取得資金等の贈与
(3)教育資金の一括贈与
(4)結婚・子育て資金の一括贈与

特に(1)(2)は広く一般に利用されている制度だと思います。
現状、これらの制度を利用して非課税になった贈与財産については、相続税の生前贈与加算の対象にはなりません。

【 相続税法上の非課税財産】

譲与税には上記(1)から(4)の 租税特別措置法上の贈与税の非課税のほか、相続税法上の非課税が存在します。
相続税法上の非課税に係る財産も、現状、相続税の生前贈与加算の対象になりません。
相続税法上の非課税は相続税法第二十一条の三 、二十一条の四に規定されています。
その規定の中で特に広く一般に行われているのが、 相続税法第二十一条の三の二に規定されている「生活費又は教育費の贈与」です。

次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
(中略)
 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
(以下略)

相続税法第二十一条の三

大学に進学し、一人暮らしを始めた子供に仕送りをするケース等、扶養義務者である親が子供に対して行った生活費や教育費の贈与のうち通常必要と認められるものに対しては贈与税が課税されません。
親が子供に対して行っている贈与のほとんどがこれに該当すると思います。
子供に必要以上の金を仕送りするケースはむしろ少ないでしょう。
通常必要と認められないような高額な仕送りをしている場合のみ、贈与税の対象になり、かつ生前贈与加算の対象になるということです。

【まとめ】

以上、贈与税の非課税財産が色々と存在することについて説明をしました。
現状、これらの非課税財産は相続税の生前贈与加算の適用を受けることはありません。

今後、相続税・贈与税の一体化が進められることによって、これらは生前贈与加算の対象になってしまうのでしょうか?
いや、それは無いと思います。
これらを生前贈与加算の対象にするのはあまりにも横暴な政策です。
今まで甘い政策で国民に贈与をするように仕向けておいて
「やっぱり相続税をかけます。」
なんて話になったら、こんなあくどい話はありません。
今まで贈与税の非課税制度を利用してきた人達は「騙された。」と言って国を訴えることになるでしょう。

3回にわけて相続税・贈与税の一体化について私見を述べてきましたが、
やはり私の予想としては、一体化の税制改正が行われるにしても
生前贈与加算の3年を5年程度に延ばす改正にとどまるのではないかと思います。
税制改正大綱が12月に発表されると思いますので、その発表を待ちたいと思います。

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