NFTを売って儲かったときの税金

【NFTとは?】

「NFT」という言葉を最近よく目にします。
NFTの絵を売ってウン百万円儲かったとかいう話が度々話題になります。しかし、NFTとは一体何なのかその実態を把握している方は少ないと思います。
私もNFTの実態についてはよく把握しておりません。

ただ、NFTというのは、「ある一定の技術により、唯一無二であることが証明されたデータ」であるということはわかります。
NFTは、唯一無二であることが証明されるため、芸術作品との相性が良いようです。
そのため、NFT化された芸術作品(NFTアート)が国内外のマーケットで売買されています。
自らが作成したNFTアートを販売する方もいれば、他の人が作成したNFTアートを転売する方もいます。


NFTアートは高値で売買されるケースもありますから、その売買によってうんと儲けたり、うんと損する人が世の中には存在するということです。
うんと儲けた方に対しては当然高い税金が課せられます。
しかし、NFTの売買によって所得が発生した場合、税金の扱いはどうなるのか、今まで税務署は見解を示していませんでした。

NFTは仮想通貨(暗号資産)界隈の技術によって発生したものです。
そのため、今までは、NFTの売買によって所得が発生した場合、仮想通貨と同様、原則的に雑所得で申告をするというのが一般的な考え方であったと思います。
※仮想通貨の取引により生じた所得が原則雑所得に区分されるという国税庁の見解はこちら↓に示されています。
暗号資産に関する税務上の取扱いについて

【税務署の見解】

令和4年4月1日、国税庁のタックスアンサーに「NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係」という内容が追加されました。
NFTについて国税庁が公式見解を示すのは初めてのことです。

結論を先に申し上げると、NFTの譲渡によって生じた所得は原則的に譲渡所得で申告すれば良いということが書かれています。
短い文章ですが、重要なことが色々と書かれていますので細部を説明していきたいと思います。

【譲渡所得?】

今回示された税務署の見解のうち重要なのは、以下の2に記載されている所得区分についてです。
NFTやFTと書かれていますが、FTについては後述します。

2 所得税の課税対象となる場合の所得区分は、概ね次のとおりです。
(1) 役務提供などにより、NFTやFTを取得した場合
・ 役務提供の対価として、NFTやFTを取得した場合は、事業所得、給与所得または雑所得に区分されます。
(2) NFTやFTを譲渡した場合
・ 譲渡したNFTやFTが、譲渡所得の基因となる資産に該当する場合(その所得が譲渡したNFTやFTの値上がり益(キャピタル・ゲイン)と認められる場合)は、譲渡所得に区分されます。

(注)NFTやFTの譲渡が、営利を目的として継続的に行われている場合は、譲渡所得ではなく、雑所得または事業所得に区分されます。

・ 譲渡したNFTやFTが、譲渡所得の基因となる資産に該当しない場合は、雑所得(規模等によっては事業所得)に区分されます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1525-2.htm

上記(1)は、役務提供すなわち何らかの仕事をして、その対価としてNFT等を受け取るケースです。
お仕事をして、現金ではなくNFTでお給料や報酬を受け取るのはレアケースだと思います。
その説明は今回は省略します。


大事なのは(2)です。
(2)には、譲渡したNFT等について値上がり益が認められる場合は、譲渡所得に区分されると書かれています。
値上がり益が認められるということは、自分で作成したNFTではなく、他の人から買い取ったNFTをさらに別の人に転売するケースが想定されます。
その場合の儲けは原則的に譲渡所得に該当すると言っています。
さらに大事なのは(注)以降です。

営利を目的として継続的に行われている場合は、譲渡所得ではなく、雑所得または事業所得に区分されます。

「営利を目的」というのは、ほとんどのケースがこれに該当すると思います。

肝心なのは「継続的」かどうかという点です。
NFTの取引が継続的であれば、その所得は雑所得か事業所得に区分されると言っています。
継続的という言葉の定義がはっきりしませんが、売ったり買ったりを繰り返しているようなケースは雑所得、事業所得に該当する。
逆に、たまたま1つだけ買ったNFTを売って儲かったようなケースは譲渡所得で申告してよい。
このようなことを言っていると私は解釈しました。

また、自分が作成したNFTアートを売却する場合、初めて市場に出したNFTアートに「値上がり」という概念は発生しませんから、その所得は譲渡所得ではなく、雑所得、事業所得に該当するという判断になるかと思います。

【FTとは?】

上記の国税庁の文章の目的語は全て「NFTやFT」となっています。
通常、FTというのは、ビットコインなどの仮想通貨もその範囲に含まれるようです。

例えば、数年前に数万円で買ったビットコインをずっと放置していて、何倍にも値上がりしたので売却したらウン万、ウン十万儲かったというのはありがちなケースです。
これは「継続的」な取引ではないので、譲渡所得で申告して良いのかどうか。
そもそも、国税庁が言っている「FT」というのが仮想通貨を含めた意味で使っているのかどうか。
この辺りは現時点では不明です。

【譲渡か雑か】

上でさんざん譲渡所得か雑所得かという話をしてきましたが、なぜそこにこだわるのかと言うと、所得の区分が譲渡所得に該当するのか雑所得に該当するのかによって税金計算が大きく違ってくるからです。
譲渡所得(総合課税)には50万円の特別控除があります。
また、5年超保有している資産の譲渡の場合、課税対象が1/2になります。
雑所得は50万円の特別控除もなければ、1/2課税の適用もありません。
NFTの売買によって生じた所得が譲渡所得に該当するのか雑所得に該当するのか、この判断は税金計算上とても重要です。
譲渡所得に該当するのであれば、その所得が50万円に満たない場合には所得税がかからないということになります。
今回税務署がNFTの取引が原則譲渡所得に該当するという見解を示したことは大変大きな意味があると思います。
ただ、上で述べた通り、見解の中で使われている「継続的」や「FT」といった言葉の定義については詳細が不明です。さらに詳しい発表を待ちたいと思います。

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