令和5年度税制改正大綱を読んだ感想

【12/16発表】

令和4年12月16日、令和5年度の税制改正大綱が発表されました。
税制改正大綱というのは、政府与党による税制改正の方針を示したものです。
大綱は毎年12月に発表されます。
今後、この大綱に基づいて税制改正が行われていくことになります。

自民党のサイト
https://www.jimin.jp/news/information/204848.html

今回の大綱の主な内容については、NHKがわかりやすくまとめています。

NHKのサイト
https://www3.nhk.or.jp/news/special/zeisei2023/

【防衛増税】

防衛費を増やすために、法人税・所得税・たばこ税を増税するという話がここ数日メディアで大きく取り上げられていました。
国会ですったもんだの議論になっていたようです。
世間の関心はこれが大綱にどう盛り込まれるか、その一点だったと思います。
しかしながら、これらについては来年度の増税は見送られました。
「施行時期は、令和6年以降の適切な時期」と大綱に書かれています。(22ページ)

法人税は本当に増税できるのか?というのが個人的な感想です。
大企業をターゲットにした増税ですから、今後、自民党の支持団体である経団連から猛反発を食らうでしょう。
さっさと来年度の増税を決めてしまえばよかったのに・・と思います。
いつの間にか法人税増税の話がなくなり、他の税金の増税の話にすり替わる。なんてことにならなければいいなと思っています。

【生前贈与加算の改正】

我々税理士の業務に最も大きく影響するのは、相続税の生前贈与加算関連の改正だと思います。
生前贈与加算改正の話は何年も前から出ていました。
改正するぞ、改正するぞと言い続けて、ついに本当に改正することになったという感じです。
いや、改正しなくてよかったんですけどね。

当ブログの以前の記事で生前贈与加算に関して私見を述べていました。

生前贈与加算は、現状3年が7年に延長されることになります。
生前7年前までの贈与は全て相続財産に加算されるということです。
言い換えれば、亡くなる7年前までの暦年贈与を利用した相続税対策は全て無効になるという話です。

暦年贈与の非課税枠(年間110万円)を利用して、毎年少しずつ財産を移転し、相続税対策を行っている方は多くいらっしゃいます。
110万円超、贈与税の最低税率の枠内で贈与を行っているケースも多いでしょう。

今までは生前贈与加算が3年だったので、暦年贈与を利用した相続税対策は有効でした。
亡くなる3年前までに全て贈与すればいい。
もし加算されることがあっても3年分ならダメージも少ない。
ところが、これが7年となると暦年贈与を利用した相続税対策はクライアントに提言しづらくなります。

相続税を意識し始めるのは、仕事を引退した70歳過ぎの方が多いと思います。
日本人の男性の平均寿命は81歳です。
亡くなる7年前までの贈与が相続財産に加算されるということは、生前贈与の大部分が無効になってしまう可能性が高いわけです。

相続遺贈により財産を取得していない孫に対する暦年贈与は、生前贈与加算の対象にはなりませんので、今後は孫に対する暦年贈与による相続税対策が主流になっていくのかもしれません。

【贈与関連の新たな情報】

生前贈与加算が7年に延長されるという話は、数日前にすでにリークされていました。
今回の大綱を見ても特に驚きはありませんでした。
ただ、贈与関連で新たな発表がいくつかありました。
気になったのは次の2点です。

①生前3年を超える生前4年から生前7年の間の贈与については、合計100万円まで生前贈与加算の対象にはならない。
②精算課税贈与は、現状の非課税枠2500万円とは別に、暦年贈与の非課税枠110万円も利用可。
(大綱42ページに記載)

①は合計で100万円ぽっちなので、大した話ではありません。
②は毎年110万円の非課税枠が利用できるという話ですが、この110万円×数年分は精算課税の加算の対象にはならないが、暦年の生前贈与加算の対象にもならないのかどうか。
大綱からは読み取ることができませんでした。
精算課税を選択することによって、110万円×数年分の非課税枠を利用できるということであれば、今後は精算課税が相続税対策として使い勝手の良いものになっていくと思います。
今後出てくる具体的な改正の内容を注視したいと思います。

【インボイス関連の改正】

消費税のインボイス関連の改正も大綱に記載されています。
ただ、これもリークされていた内容がそのまま書かれているだけなので、驚きはありませんでした。
インボイス関連の主な改正点は次の2点です。

①免税事業者がインボイス発行事業者となった場合、売上の消費税の2割の納付で良い。
②売上1億円以下であれば、1万円未満の経費はインボイス不要。

①は、小売でなくても簡易課税の第2種と同じ計算で良いという話です。
サービス業などを行っている方にとっては大きな改正です。
ただ、小売業等を行っている方は、原則的な計算で2割より少ない納税になる可能性があります。
慌てて飛びつかない方が良いです。
慎重に検討すべきです。

②は、売上1億円以下限定の話ですが、もっと範囲を広げてほしかったと強く思います。
売上5億円位にしてほしかった。
中小企業でも卸売業など業種によっては簡単に売上1億円を超えてしまいますので。
細かい金額の領収書を見て、いちいちインボイスあり、なしを判断しなければいけないのかと思うと先が思いやられます。

【その他の改正】

その他の改正項目としては
・NISAの拡充
・給与源泉徴収票の原則税務署への提出不要
・電子取引データの検索要件不要
この辺りが我々の業務にも影響する大きな改正項目だと思います。
これらに関してはまた時間があれば細かくお伝えしたいと思います。

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