令和5年度税制改正大綱 電子帳簿保存法はどうなる?

【はじめに】

令和4年12月16日、与党による税制改正大綱が発表されました。
この中に電子帳簿保存法の改正についても記載があります。
電子帳簿保存法のうち、電子取引データの保存については、
令和6年1月1日から義務化されることがすでに決まっています。
この内容について何か変更があったのでしょうか?
具体的に見て行きたいと思います。

令和5年度税制改正大綱
https://www.jimin.jp/news/information/204848.html

【おさらい】

まず、電子帳簿保存法についておさらいします。
電子帳簿保存法は、電子帳簿を一定のルールに従って保存することを定めた法律です。
電子帳簿保存法は以下の3つに分類されます。

①電子帳簿等保存
②スキャナ保存
③電子取引

①は会計ソフトで作成する元帳や仕訳帳の保存法
②は紙の領収書等をスキャナで読み込んで保存する場合の方法
について定めたものです。

多くの方が誤解されているのですが、今のところ①と②は義務規定ではありません。
会計ソフトのテレビCMで「電子帳簿保存法義務化!」と大げさに言っているので
電子帳簿保存法に対応した新しい会計ソフトを買わなければいけないと感じる方が多いのですが、必ずしもその必要はありません。


義務化されるのは、③の電子取引データの保存についてのルールです。

令和6年1月1日より、電子取引データについては、一定のルールに従って保存する義務が発生します。
PDF等のデータで受け取った請求書・領収書等については、紙ではなく、そのデータ自体を一定のルールに従って保存しなければいけないことになります。

この一定のルールというのがやっかいで、多くの事業者の頭を悩ませていました。
電子取引データは「日付・金額・相手方」で検索できるようにしなければいけません。
ファイル名やエクセルシートにいちいちこれらの情報を入れて保存しなければいけません。
数が多いとうんざりする作業です。

【売上5,000万円以下は対象外】

電子取引データの保存要件のうち面倒な検索要件については、以前より2期前の売上が1,000万以下であれば従わなくて良いとされていました。

電子取引データの保存方法(改正前)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0021011-068.pdf

令和5年度税制改正大綱で、この売上1,000万円以下が「5,000万円以下」に改正されることが明記されました。
2期前の売上が5,000万円以下であれば、面倒な検索要件に従わずにただデータを保存しておけば、それで事が足りるということです。
多くの中小企業は面倒な作業から開放されることになります。
このことは税制改正大綱の103ページに記載があります。

① 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存要件について、次の措置を講
ずる。
イ 保存義務者が国税庁等の当該職員の質問検査権に基づく電磁的記録のダ
ウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には検索要件
の全てを不要
とする措置について、対象者を次のとおりとする。
(イ)その判定期間における売上高が 5,000 万円以下(現行:1,000 万円以
下)である保存義務者
(ロ)その電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力さ
れ、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものに限る。)
の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている保存義務者

https://storage.jimin.jp/pdf/news/information/204848_1.pdf

【売上関係なく紙出力しておけばOK?】

気になるのは(ロ)の記載です。
データでもらった領収書等は、紙出力をしてその紙を「日付及び取引先ごとに整理」しておけば、元のデータの保存は検索要件に従わなくて良いという話です。

(イ)と(ロ)は、それぞれ文章の最後が「保存義務者」で終わっているので、おそらくどちらか一方の要件を満たせばOKなのではないかと思いますが、現段階では正確な判断はできません。

(ロ)の要件を満たすだけでOKということであれば
全ての事業者は以下の処理をすれば事が足ります。

・データで受け取った請求書・領収書等は、そのままファイル名を変更せずフォルダに保存する。
・紙出力をして取引先ごとの紙ファイルに綴る。

これでOKなら作業は随分と楽です。

今後、大綱の内容に基づいて法整備が行われていきます。
面倒な検索要件に従わなくて済むような改正になることを願います。

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