減額した役員給与を元に戻せる?

会社役員の毎月の給与は年1回の株主総会の決議によって改定がなされます。それ以外の改定は原則的には認められません。
役員の給与は、毎月定額でなければ損金として認められないということです。
この毎月定額の役員の給与を税法上「定期同額給与」と呼びます。

さて、コロナの影響によって経営が著しく悪化し、役員給与の減額をせざるをえない状況になった会社は多いと思います。このような「業績悪化改定事由」による減額は税法上特別に認められています。(参照:新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係

問題は、役員給与の減額をした会社が、業績が回復したため、役員給与の金額を元に戻した場合、その増額後の役員給与が損金として認められるかどうかです。
残念ながら、単に業績回復を理由に給与の金額を元に戻しても、その戻した後の給与は定期同額給与にはならなず、増額部分が損金不算入となります。
(参照:税務通信No.3603,No.3606,No.3621,法人税法第34条)

ただし、業績回復ではなく、法人税法第34条で言う「臨時改定事由」に該当すれば、戻した後の給与も定期同額給与として認められることになります。
この「臨時改定事由」というのは、「その法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」のことを言います。

「役員の職制上の地位の変更」というのは平の取締役が代表取締役に就任した場合等を指すので、今回の件とはあまり関係の無い話です。
コロナによって減額させた役員給与を元に戻す行為が、「役員の職務の内容の重大な変更」に基づくものなのかどうなのか、そこが問題になるわけです。
「役員の職務の内容の重大な変更」があったため、役員給与を元に戻したのであれば、戻した後の給与は定期同額給与として認められることになります。

税務通信No.3606では、店舗管理のため各店舗を飛び回っていた役員が、全店舗の閉鎖に伴い店舗管理業務が不要になり、給与を減額。その後営業再開により従来通り店舗管理業務を行うことになり、給与を元に戻した。
このようなケースが「役員の職務の内容の重大な変更」に該当すると書かれています。

飲食店、カラオケ店などを営む会社で、営業を休止していた会社が営業再開をし、売上が回復したため役員給与を元に戻した。このような場合はわかりやすいのですが、営業休止の事実が無い場合は、何をもって「役員の職務の内容の重大な変更」があったと判断するのか。その判断がとても難しいように思います。

そこに「役員の職務の内容の重大な変更」が無いと判断された場合、元に戻した役員給与の一部は損金不算入となってしまうので、慎重な判断が必要となります。
安易に役員給与の減額と増額を行わないよう気をつけたいと思います。

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