所得拡大促進税制と人材確保等促進税制は選択適用

【生まれ変わった所得拡大促進税制】

今回は、会計事務所向けの難しい内容です。

中小企業が賃上げを行った場合の優遇税制として「所得拡大促進税制」というものが存在します。
会計事務所の人にとっては、おなじみの制度です。
令和3年度税制改正で、この所得拡大促進税制に大きな改正が入りました。

所得拡大促進税制は、数年前に導入されて以来、何度も改正が入り内容が変わってきました。
導入された当初は、新しく入った人や辞めた人をピックアップするのが面倒な制度でした。
平成30年度の改正で継続雇用者を比較する制度に変わりましたが、それも結局12ヶ月給与が出ている人をピックアップしないといけないので、判定が面倒なのはあまり変わらない感じがしました。
令和3年度の税制改正で、この面倒だった制度は、ものすごくシンプルな制度に生まれ変わりました。

【単純明快】

中小企業向けの新しい所得拡大促進税制は、雇用者給与等支給額を前年度と比較して、それが1.5%以上増加すれば、その増加した額の15%を法人税額から控除するという内容になっています。(法人税額の20%が上限)
雇用者給与等支給額というのは、従業員(役員や役員関係者以外)の給与の総額です。
新しく入った人や辞めた人の給料を集計する必要はもうありません。
12ヶ月給与が出ている人を集計する必要もありません。
ただ単純に、従業員全体の給与を2年分比較するだけです。
決算書上、役員報酬と従業員給与の科目を分けて表示していれば、決算書を2年分見るだけでこの制度を適用することができるのかできないのか大まかに判断することができます。
(もちろん、厳密には従業員に役員関係者が含まれていないかどうか等の細かいチェックは必要です。)

【人材確保等促進税制】

一方、賃上げを行った大企業の税金を優遇する制度が別に存在しています。
この制度は元々中小企業も選択することができる制度でしたが、所得拡大促進税制よりも要件が厳しく、それでいて税額控除額は所得拡大促進税制と同じでしたので、あえて中小企業がこちらの制度を適用するメリットはありませんでした。
この大企業向けの制度は、令和3年度の税制改正で内容がガラリと変わりました。
そして「人材確保等促進税制」と名付けられました。
今後は、中小企業もこちらが適用できるかどうか判定の作業が必要になります。
所得拡大促進税制よりも控除額が大きくなるケースがあるからです。
人材確保等促進税制は、新規雇用者給与等支給額が前年よりも2%増加していれば、当年の新規雇用者給与等支給額の15%を法人税額から控除するという制度です。(法人税額の20%が上限)
すなわち、新しく雇った従業員全員の給与を2年分比較して、それが2%増加していれば適用できるという制度です。
ここで注意すべきは、税額控除額は新規雇用者給与等支給額の15%であるという点です。
増加額ではありません。
当年に新しく雇った従業員全員の給与丸ごとそのまんまに15%をかけた金額が法人税額から控除できるので、控除の金額が大きくなるケースが多いと思います。

【選択適用】

所得拡大促進税制と人材確保等促進税制は併用できません。
どちらか一方しか選択できません。
人材確保等促進税制は、措置法第42条の12の5第1項、所得拡大促進税制は第2項に規定されています。
第2項に、「前項の規定の適用を受ける事業年度等を除く」という記載があります。
第1項と第2項は同一年度に重複して適用することができないという意味です。
中小企業の税務申告を行う際には、所得拡大促進税制と人材確保等促進税制のそれぞれの税額控除額を算定し、金額の大きい方を選択適用することになります。
2つの税制の比較検討が必要なので、多少面倒臭さはありますが、それでも今までの制度に比べると計算は楽になったように思います。

両制度はいずれも、令和3年4月1日から令和5年3月31日までに開始する各事業年度から適用となります。

以上、2つの税制について調べたことを書き綴りましたが、間違っている箇所があるかもわかりません。
その際は是非コメント欄でご指摘いただければと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です